井筒Kの、Jazzとレトロとユーモラウス

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この連休、一年ぶりに実家に帰省し、地方の惨状に胸を痛め、その中で活きる
人たちのタフさがかっこ良いなと思った。
私の実家は兵庫県豊岡市にある。山陰地方にある人口4万人程度に過疎化した
町で、数年前に台風23号で町全体が水に沈んだので有名になりご存知の方もあるだろう。
あの時は、鉄道が断線する中、私もバス等乗り継いで実家の救援に帰り自衛隊さながら
働いてクタクタだったのを思い出す。私が到着した時は、洪水が引き始めた頃だったので
後処理に皆が勤しんでたタイミング。戦地ではないにしろ、ああいう時って、妙に
力が出て元気なもんだと思った。火事場の馬鹿力なんでしょうね。
さて、そんな町。私が暮らしていた子供の頃は、日本のかばんの80%をこの町が
生産しており、友人知人のほとんどが、かばんメーカーや、かばん工場だった。
どこの家庭も内職でかばんを作っていた。おそらく手が足りなかったのだろう。
私が生まれてはじめてやったアルバイトもかばんの輸送手伝いだった。懐かしいが
「マディソンスクエアガーデン」かばんが日本中でブームになったときは、おそらく
町はバブルだったんだろうなあと今になれば思う。

さてこの町、国の方針で周囲の小さな赤字財政の町村を合併し、人口は9万人程度に
なったらしいが、財政は一気に悪化した。ご存知の通り、我々の国は大赤字だが国債
発行等で、だましだまし公共事業も作っている。ただ、地方にはその手法が現実的にない。
よって、地方の公共事業発注は0状態で、建築土木関係の人が多くを占める地方では
大不況が続いている。ちなみに兵庫県最大のゼネコンは上場企業であったが、先日倒産した。
子供の頃、皆が笑顔で闊歩していた大通りにも人はおらず、かばん屋も数えるほど、
夜の街には風だけが吹いていた。また、病院がたいへんなことになっており、兵庫県
上半分の広大な地域で満足に手術を受けられる病院が1軒もなくなったそうだ。その最
も大きな病院も麻酔医が近々全員いなくなるとか。かつて僕が住んでいた時、地区の
小学生は50人、現在は8人に減った。小学校時代の同級生と飲んだが、それでも奴らには
少子高齢化した町を守ろうという意識が言葉の端々に見えるのだ。
大学生の子供の学費と仕送りをしながら両親と同居し、自分の小学生の子供も属してるからと
地域行政の一部を担う姿は、何も特別な存在ではなく、地方の40代の男女の平均的な姿なのだ。
長渕ではないが、大都会東京に住む私は、30歳の時から親に仕送りしてるのが唯一自慢で、
子供を持つ甲斐性はなかったので住む地域にボランティア貢献もしてない。
父は78歳。髪結いの亭主ゆえ若い時から真面目に働いていないので甲斐性なしだが、
母は72歳ながら現役バリバリで週1休みで50年以上働いている。
彼らのタフさは、真剣に探せばチャンスが唯一転がっているだろう大都会で、
少しノホホンとしていた自分の脆弱さを浮き彫りにする。
最後に誤解しないでほしいのは、地方で暮す人の方が、精神的に豊かな暮らしをしている
ということだ。先日テレビで「ブータン」という田舎暮らし国家で、幸せ統計をとったら
国民の80%以上が幸せだと答えた。「金」は最低限は必要、暮らせないから。
一方「幸せ」が必要な人は、自分ではなく家族や一族、友人の幸せを考えればいいんだという
説がある。せいぜい、自分のことも考えながら、余裕があればそんなこともするわけだけど、
幸せ入門者レベルとしてはそれでいいんだと思う。